税理士紹介サービスについて

税理士紹介サービスの実態

この数年、税理士紹介サービス会社が異常に増えてきています。これは平成14年の税理士法改正で料金の自由化や広告規制の緩和など士業全般について「規制改革」が行われたことに端を発しています。小泉内閣の規制緩和政策の一環として、従来の弁護士・司法書士・税理士・行政書士・社会保険労務士などのいわゆる「士業」については、業界で決められた基準料金がありましたが、これが廃止となり、個々の取引ごとに自由に報酬を決めることが認められました。

士業は専門職として国家資格が必要とされ、高い社会的信頼性のもとに一般的に「先生」といわれる立場の職業として成り立ってきた業界です。このため、一般の会社と違い、広告については「品位」を求められ、一定以上のものは厳しく制限されていました。

しかし、インターネットの普及に伴い、広告規制も有名無実化し、同業者間での顧客争奪戦が次第に激化してきました。特に税理士業界では、税務署退職者の受け皿として税理士資格を与えていることもあって(OB税理士と言われています)、会員の半数近くがOB税理士ともいわれています。また、年々、税理士の数が増え、私が登録した平成元年、登録番号が6万番台であったのが、いまでは、(正確には把握していませんが)その倍以上になってきているという実態があります。

政府としては、規制緩和によって、競争が活発になれば、士業も安閑としていられず、切磋琢磨して、サービスの質も向上し、消費者にとって良い影響をもたらすものとの政策意図で進められてきたことは、論を待たないことではありますが、そうした結果として、税理士や他の士業を紹介する会社がインターネットによって一挙に増加しました。

これは、専門職の立場からは自己の有能性を自ら宣伝するようなことは、そもそもできるものではなく、それまでは、ほとんどの税理士が個々人の人脈を通じての紹介やクチコミによる集客以外に集客手段がなく、経営的に個人事業者として極めて小規模零細の経営状態であるという実態があるからであり、そこに目をつけた業者がネットやテレホンアポイントメントなどの営業を駆使して、税理士紹介サイトを立ち上げてきたということです。

税理士紹介サイトでは、紹介料は無料でリスクはない、顧問料が安くなる、サービスが良くなる、御社に合った税理士を紹介するなどというセールスコピーで盛んに納税者に呼びかけて、税理士を紹介する業務を盛んに展開し、今では何万件も紹介したなどとする会社も現れてきているようです。

しかし、その実態は、単なる値引き競争による顧客の奪い合いであり、税理士に広く登録を呼び掛けて、年間顧問料の50%
から70%、さらに翌年以降も紹介料取るような会社まで出現してきているのが実情です。

以前はそれでも、紹介会社が社員に立ち会わせていたのですが、現在ではほとんどの会社が、電話やメールでアポイントメントを採り、税理士に単身で契約を採らせに行くという会社がほとんどとなってきました。そのうえで、成約率の高い税理士を優先して紹介することで、荒稼ぎをするような状況にまでになってきており、最も顧客にとって重要なサービスの点はすべて税理士任せとなっているのが、実情です。

私も昨年から何件か紹介をもらいましたが、顧問料のほとんどをもっていかれる契約になっているので、果たして、このようなことで、本当に良いサービスができるのか・・・正直なところモチベーションの点でかなりやる気がなくなるという体験をしました。

税理士の仕事は、税理士法によって、定められています。

1.税務代理

2.税務書類の作成

3.税務相談

4.財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務

(税理士の業務)
第二条   税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法 (昭和二十五年法律第二百二十六号)第十条の三第二項 に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項 に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。第四十九条の二第二項第十号を除き、以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。
一   税務代理(税務官公署(税関官署を除くものとし、国税不服審判所を含むものとする。以下同じ。)に対する租税に関する法令若しくは行政不服審査法 (平成二十六年法律第六十八号)の規定に基づく申告、申請、請求若しくは不服申立て(これらに準ずるものとして政令で定める行為を含むものとし、酒税法 (昭和二十八年法律第六号)第二章 の規定に係る申告、申請及び審査請求を除くものとする。以下「申告等」という。)につき、又は当該申告等若しくは税務官公署の調査若しくは処分に関し税務官公署に対してする主張若しくは陳述につき、代理し、又は代行すること(次号の税務書類の作成にとどまるものを除く。)をいう。)

二   税務書類の作成(税務官公署に対する申告等に係る申告書、申請書、請求書、不服申立書その他租税に関する法令の規定に基づき、作成し、かつ、税務官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十四条第一項において同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下同じ。)で財務省令で定めるもの(以下「申告書等」という。)を作成することをいう。)

三   税務相談(税務官公署に対する申告等、第一号に規定する主張若しくは陳述又は申告書等の作成に関し、租税の課税標準等(国税通則法 (昭和三十七年法律第六十六号)第二条第六号 イからヘまでに掲げる事項及び地方税に係るこれらに相当するものをいう。以下同じ。)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)

2   税理士は、前項に規定する業務(以下「税理士業務」という。)のほか、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。ただし、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない。 

税理士法

したがって、どの税理士もこれら業務以外については、「税理士業務」として行うことはできません。

しかも、税務会計については、税法や会計原則によって、仔細に渡り法規制が設けられています。

このため、ある程度の選択肢は、税理士や納税者の裁量によりますが、法規を逸脱した「節税」や「租税回避行為」、当然、「脱税」はできないことになっています。

問題なのは、毎年変わる税制であり、税理士は年間36時間の研修義務が課されています。

このため、税理士によって、著しく税金が少なくなったり、赤字決算が黒字になってしまうということはあり得ません。

もちろん、「納税者有利」や「経理自由の原則」「重要性の原則」「計算経済性」といった考え方はありますので、その範囲で、最も納税者にとってより良い選択をするのかは、税理士の手腕であることも事実です。

しかし、そうしたことをことさら強調して、実態的根拠もないのに過剰に納税者に対して期待をもたせ、集客によって暴利を図るような行為は、社会的公正という観点からも、かなり問題であるように思います。