税務コラム

2017年1月11日 水曜日

役員に対する報酬・未払金・貸付金の処理について

役員に対する報酬・未払金・貸付金の処理について



1.定期同額給与
 役員報酬については、法人税法上、「法人が役員に対して支給する給与の額のうち次に掲げる定期同額給与、事前確定届出給与又は利益連動給与のいずれにも該当しないものの額は損金の額に算入しない。」と規定されており、このうち「定期同額給与」は、「その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの」とされています。

 つまり、役員報酬は、基本的に「定期同額給与」として、毎月支給額が同額でなければ、損金(法人の費用)として認められないことになっています。

 役員報酬の変更の際は、「その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに」つまり、期首から3か月以内に株主総会を開いて、変更すれば良いことになっています。

 このため、以下の場合以外に会社の都合で勝手に役員報酬を上げたり、下げたりすると、それまでの報酬との差額は、「損金不算入」とされてしまい法人税を追徴されてしまうことになってしまいます。

変更する場合は下記のいずれかにあたることが条件となっています。

イ.会計期間開始の日(事業年度開始の日)から3か月の間に改定すること。
ロ.その事業年度で、取締役→代表取締役などの職制変更、長期入院で仕事ができないなどの理由による改定。
ハ.業績の著しい悪化による減額改定。

2. やむを得ず役員報酬を減額せざるを得ない場合
 このため、一旦、役員報酬を決めると翌期の決算まで報酬額を変更することができなくなりますから、期中、経営が悪化するなどで支払いが滞ってしまうケースも出てきます。

 業績や資金繰りが悪化したことで、事業年度の途中に、役員報酬(定期同額給与)の減額を検討するような場合、減額の理由として、やむを得ず役員報酬を減額せざるを得ない事情があれば、減額後も全額が損金として認められます。

[やむを得ず減額せざるを得ない事情とは?]
 ①財務諸表の数値が相当程度悪化した
 ②倒産の危機に瀕している
 ③経営悪化により、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与を減額しなければならなくなった
※一時的な資金繰りの都合、あるいは単に予算を達成できなかったといった理由は、やむを得ない事情には含まれません。
業績悪化による減額としては、次のような場合が考えられます。
例1)銀行との間で借入金の返済期限延長や条件緩和(リスケジュール)をするため、役員報酬を減額しなければならなくなった。
 銀行との交渉時に作成した返済計画、資金繰り表などで減額の理由を明らかにしておきます。
例2)業績や財務状況、資金繰りが悪化したため、取引先等からの信用を維持・確保するために、役員報酬の減額を盛り込んだ経営改善計画を策定した。
 減額する金額や期間、減額による効果など、取引先等が納得する経営改善計画であることが必要です。

3.その他の業績悪化による改定
 次のようなケースも業績悪化改定事由に該当すると考えられますが、あくまでも客観的な状況によって判断します。客観的な状況がない単なる将来の見込みにより役員給与を減額した場合は該当しません。
例1)売上の大半を占める主要得意先の経営悪化により、その事業規模を縮小せざるを得ない状況にあることが判明し、数か月後には当社の売り上げが激減することが避けられない状況が生じた場合において、
現状では売上などの数値的指標が悪化しているとは言えないが役員給与の減額などの経営改善策を講じなければ客観的な状況から今後著しく悪化することが不可避である場合。
例2)主力製品に瑕疵があることが判明して、今後多額の損害賠償金やリコール費用の支出が避けられない場合。

4.役員給与減額の際の注意
①経営上の数値的指標が著しく悪化した
 役員給与の減額にあたり、会社経営上の数値的指標の著しい悪化が不可避と判断される客観的な状況としてどのような事情があったのか、経営改善策を講じなかった場合の指標を改善するために具体的にどのような計画を策定したのか、といったことを説明できるようにする必要があります。

②役員が病気等により職務の執行が一部できなくなった
 役員が病気で入院したことにより当初予定されていた職務の執行が一部できなくなった場合に、役員給与の額を減額することは臨時改定事由による改定と認められます。
 また、従前と同様の職務の執行が可能となったことにより、取締役会の決議を経て入院前の給与と同額の給与を支給する改定についても、「役員の職務の内容の重大な変更その他     これに類するやむを得ない事情」として臨時改定事由による改定と認められます。 

5.役員未払金として処理した場合
 役員報酬を以上のような理由以外の理由で支払えないような場合、たとえば資金繰りが一時的に悪化したといったような場合は、減額すると損金不算入になってしまいます。このため、大抵の会社では、「役員未払金」として処理することになります。

 しかし、ここで「役員報酬」として損金に計上し、源泉税を徴収することになりますが、通常、役員報酬は「定期的に支給する」ことが建前ですので、いつまでも未払いにしておくわけにはいきません。

 少なくとも、2、3か月のうちには支払うべきものと考えられていますので、場合によっては、役員借入金として処理しなければならなくなるケースも出てきます。この場合、本来は、支払利息を計上すべきところですが、法人では損金、個人では利子所得となるため、現時点では、税務上相殺・免除といった扱いとして黙認されることになっています。

6.金銭等を低い利息で貸し付けたとき
 しかし、逆に役員に対し、個人的な費用を会社が立て替えて支払った場合には、「役員立替金」として処理しますが、これを何か月もそのままにしておくと「役員賞与」として源泉税の認定課税が行われる場合もありますから、注意が必要です。

 ただし、この場合、税務当局との交渉で「役員貸付金」として処理される場合もあります。しかし、この場合は、上述した「役員借入金」とは違い、「受取利息」が認定され、一定の利率(約定利率として金銭消費貸借契約書や借用証書で市中銀行の利率や民法あるいは会社法上の利率5~6%)を参考値に計上することになり、この受取利息は法人の益金として法人税が課税されることになります。

なお、低い利息で金銭を貸し付けた場合、平成26年以後の貸付けについては、その利率が貸付けを行った日の属する年の特例基準割合による利率以上であれば、原則として、給与として課税されません。

 平成27年以後の特例基準割合による利率は1.8%ですが、1.8%に満たない利率で貸付けを行った場合、次の(1)から(3)のいずれかに該当する場合を除き、1.8%の利率と貸し付けている利率との差額が、給与として課税されることになります。
(1) 災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要となった役員又は使用人に、合理的と認められる金額や返済期間で金銭を貸し付ける場合

(2) 会社における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定め、この利率によって役員又は使用人に対して金銭を貸し付ける場合

(3) (1)及び(2)以外の貸付金の場合で、1.8%の利率と貸し付けている利率との差額分の利息の金額が1年間で5,000円以下である場合
 なお、平成14年1月1日から平成18年12月31日に貸付けを行った場合には4.1%、平成19年1月1日から同年12月31日に貸付けを行った場合は4.4%、平成20年1月1日から同年12月31日に貸付けを行った場合は4.7%、平成21年1月1日から同年12月31日に貸付けを行った場合は4.5%、平成22年1月1日から平成25年12月31日に貸付けを行った場合は4.3%、平成26年1月1日から同年12月31日に貸付けを行った場合は1.9%が適用されます。
 ただし、会社などが貸付けの資金を銀行などから借り入れている場合には、その借入利率を基準として計算します。
 
また、使用人に対する住宅資金の貸付けを平成22年12月31日までに行った場合には、年1%の利率を基準とする特例があります。

(国税庁HPより抜粋)


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投稿者 大埜治仁税理士事務所