事例

2016年12月29日 木曜日

その支払い、外注費で大丈夫ですか?

その支払い、外注費で大丈夫ですか?


税務調査で指摘されると大変なことに!!

先日、クライアントからのオファーがありました。

税務署から「御社の調査に伺いたい。」と

その理由として、

「御社の外注費として経理されている処理は、本来、アルバイトかパートとして、雑給扱いとなるはずです。
外注費ならば、御社の申告のように消費税の仕入税額控除は受けられますが、給与ということとなりますと
仕入控除も認められないし、この所得に対する源泉税も納める必要があります。」

とのことでした。

人件費の支払い形態として「外注費」で処理しているケースは、建設業やソフトウェア業、美容業などでよく見かける経理処理です。一人親方やフリーランスに仕事をお願いして「給与」ではなく「外注費」で処理します。

しかし、これが税務調査で「これは給与ですよ?」と指摘される場合があります。その場合、「源泉徴収漏れ」として「源泉所得税の追徴課税」「消費税仕入税額控除額の過大計上」として「法人税の追徴課税」といったのダブルパンチを受けます。

「外注費」ではなく「給与!」と指摘を受けた場合、例えばフリーの一人親方に1年間ずっと来てもらって、月平均40万渡していたとして、かつ、消費税は、本則課税で納めていたとします。この場合の、追加徴収は、次の通りとなります。 

源泉税の徴収漏れ税額は、月額40万(乙欄適用)→ 8万2900円×12月=99万4800円
消費税の追徴税額は、40万×5/105=1万9047円→1万9047円×12月=22万8564円

合計で、なんと1,223,364円にも上ります。その上、延滞税・加算税もかかってくれば、追加納税額は150万円は超えてしまいます。

しかも、1年だけでなく調査の対象期間3年間となると、もはや考えるだけで恐ろしくなります。

では、そもそも「外注費」と「給与」はどう区別すべきだったのでしょうか?

基本的な考え方から申し上げますと、

・請負契約に基づくものは「事業所得」として「外注費」

・雇用契約に基づくものは「給与所得」として「給与」

と処理することになります。当然、契約書があり双方で合意されていたことが、前提となります。

ここで「外注費」なら源泉徴収の必要がなく、消費税の計算上消費税分は控除できます。
ただし、所得税法第204条1~8によって規定されている「報酬・料金等」については、原則として10.21%(一部報酬については特別な算定方法となっています)の源泉徴収が必要です。

「給与」だと源泉徴収の必要があるうえ、消費税の計算上も控除ができません。さらに雇用しているということになると社会保険の加入の必要性も問われることとなります。(ただし、税務署は国税庁の所管なので、いまのところは、社会保険事務所などから徴収の要請があるわけではありませんが、今後はマイナンバーによって、税金と社会保険については情報共有されるため、いずれは、そちらからも調査が入る可能性は高まってきています。)

このため、一般の中小企業では、実質的に雇用しているような状態でも、形式上は外注先としていることも多いわけです。

税務調査で問題となる「外注費」と「給与」

政府は「同一労働同一賃金」を推進してきていますが、正規雇用と非正規雇用の格差だけでなく、どこの会社でも、繁忙期にパートやアルバイトとして手伝ってもらいながら、源泉徴収をせずに、「外注扱い」としてそのまま継続して仕事をやってもらっているケースがたまにあることは、否めない事実です。

しかし、中途半端な雇用形態は税務調査で指摘を受けるリスクがあります。

税務署は、単に雇用契約の書類があるかどうかだけではなく、通達によって、一定の事項を「総合的に勘案する」ことにより判定することとして、「外注」なのか「給与」なのかを判定することを主張してきます。

所得税法では、「総合的に勘案する」という基準として所得税個別通達において、次のように扱うことを公表しています。

「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」
平成21年12月17日付課個5-5(抜粋)

1 定義
 この通達において、「大工、左官、とび職等」とは、日本標準職業分類(総務省)の「大工」、「左官」、「とび職」、「窯業・土石製品製造従事者」、「板金従事者」、「屋根ふき従事者」、「生産関連作業従事者」、「植木職、造園師」、「畳職」に分類する者その他これらに類する者をいう。

2 大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得区分
 事業所得とは、自己の計算において独立して行われる事業から生ずる所得をいい、例えば、請負契約又はこれに準ずる契約に基づく業務の遂行ないし役務の提供の対価は事業所得に該当する。また、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく役務の提供の対価は、事業所得に該当せず、給与所得に該当する。

 したがって、大工、左官、とび職等が、建設、据付け、組立てその他これらに類する作業において、業務を遂行し又は役務を提供したことの対価として支払を受けた報酬に係る所得区分は、当該報酬が、請負契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのか、又は、雇用契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのかにより判定するのであるから留意する。

この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。

(1)他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。

(2)報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。
(3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。

(4)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。

(5)材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。


要するに、外注であるか、給与所得者がどうかは、「請負契約」か「雇用契約」かといった「契約形態」を前提としながら、実質的に支払者の指揮監督に服して時間的な拘束を受けているか、不可抗力による作業結果の滅失に対して請求できるかどうか、材料や用具を提供されているかどうかといった点で、指揮監督に服し、材料や用具の提供を受けている場合は「給与所得者」として認められ、そうでないなら自己の責任・採算で独立してやっている事業者として「外注業者」と認められるということです。

したがって、外注の場合は、事業所得の確定申告が必要であり、給与所得者であれば、会社の方で源泉徴収しなければならないことになります。

では「外注費」と指摘されないためにはどうしておくべきでしょうか。

「外注費」を「給与」と認定されないためにまず書類をきちんと整えておくことはもちろん、「請負契約書」を作成して、上記の内容について確認してもらい、当人に請求書を出してもらうことが必要となります。

このように、特に指摘されそうな外注の場合には、疑われそうなポイントを疎明できるように処理しておくことが、税務リスク回避となります。

源泉徴収の対象となる報酬とは?
所得税法第204条に揚げられている職業については、当然、源泉徴収は必要となりますが、「限定列挙」されているため、それに近い類似した仕事についても源泉徴収しなければならないかどうかが問題となります。

特に「外注」の方については、その点があいまいなため、度々、税務でも問題となっています。

基本的には、「外注」に支払う報酬について、すべて所得税を源泉徴収する必要はなく、源泉徴収が必要な範囲は、所得税法の第204条1~8に定められております。

1.原稿料や講演料やデザイン料等
2.弁護士や司法書士、税理士、弁理士などに支払う報酬
3.社会保険診療報酬支払基金法の規定により支払われる診療報酬
4.プロ野球選手やプロ格闘家、モデル、外交員などに支払う報酬
5.芸能人や芸能プロダクション等を営む個人に支払う報酬
6.宴会等において、接待等を行うことを目的とするホステスに支払う報酬
7.契約金など、役務の提供を約束し一時に支払う報酬
8.広告宣伝のための賞金、馬主が受ける競馬の賞金

これら上記のいずれかに該当する報酬や料金であれば、所得税の源泉徴収をする必要があります。

所得税基本通達204の7では「デザイン」について源泉徴収が必要とされますが、その「デザイン」の範囲は次のように規定されています。

1.工業デザイン(自動車や家具等のデザイン及び織物に関するデザイン)
2.クラフトデザイン(茶わん、灰皿、テーブルマットのような雑貨のデザイン)
3.グラフィックデザイン(広告、ポスター、包装紙等のデザイン)
4.パッケージデザイン(化粧品、薬品、食料品等の容器のデザイン)
5.広告デザイン(ネオンサイン、イルミネーション、広告塔等のデザイン)
6.インテリアデザイン(列車、船舶の客室等の内部装飾、その他室内装飾)
7.ディスプレイ(ショウウインドー、陳列棚、商品展示会場等の展示装飾)
8.服飾デザイン(衣服、装身具等のデザイン)
9.ゴルフ場、庭園、遊園地等のデザイン

では、上記に列挙されていないものってどう取扱うのでしょうか?

上記に係る「デザイン」であれば当然、支払う報酬には源泉徴収が必要です。言い換えると、通達で記載されていない内容のデザインについては源泉徴収を必要としないのではないとも言えそうですがそうともいえない見解もあります。

「Webサイトのデザイン」や「建築などのデザイン」については、上記の通達には記載されていませんが、所得税法で規定している「デザイン料」には該当し、源泉徴収をする必要があるるとの見解が有力です。

ただし、「Webサイトの制作費」のうち「デザイン」とは明確に区別される部分についての費用は、「区分経理」をすることで、源泉徴収の必要がないとの主張もあり得ます。

国税庁に確認したところ、これらについては、「限定列挙」ということで、上記から外れた者は、「除外する」との解釈もありますが、「~等のデザイン」という表記については、「類似職業も含まれる」ことになりますので、個別的に税務署に確認を取っておいた方が無難です。

ただし、「通達は通達であり、税法解釈の行政上の解釈に過ぎません。」

租税庁=行政と裁判所=司法とは、「三権分立」で、解釈に違いがあって当然です。



このエントリーをはてなブックマークに追加
このエントリをlivedoorクリップに登録
このエントリをBuzzurlにブックマーク

投稿者 大埜治仁税理士事務所