税務コラム

2016年11月 3日 木曜日

公的介護保険の基礎知識





少子高齢社会において、介護は今後さらに注目される問題です。2000年にスタートした公的介護保険制度は、平成27年度には第6期(平成27年度~29年度)に入り、様々な改正が行われました。

介護保険の基礎知識と昨今の改正点について理解を深めておきましょう。

1、介護保険料

公的介護保険は、原則として市区町村に住所を有する40歳以上のすべての人を被保険者とします。65歳以上を第1号被保険者、40歳から65歳未満を第2号被保険者として区分しています。

保険料については、65歳以上(第1号被保険者)は所得に応じた保険料が年金から天引きされます。40歳以上65歳未満(第2号被保険者)は医療保険料に上乗せして徴収されます。
平成27年度より、第1号被保険者の保険料段階が改定されました。低所得者の保険料を引き下げられ、標準第6段階は第9段階と改定されました。

保険料段階の設定は9段階となっていますが、市町村が条例により独自で決定しています。ほとんどの市町村でさらに細分化されています。

介護保険料の算定において「市町村民税非課税」とは、災害や障害等の減免によらずに市町村民税が課税されていない場合を指します。また、「年金」とは、老齢(退職)年金など市町村民税の課税対象となる年金の金額で、障害、遺族、老齢福祉年金などの非課税年金の金額は含まれません。


所得段階 区分 計算方法


2、介護保険のサービス

介護保険による介護サービスを利用するには、介護が必要な状態であると認定(要介護認定)を受ける必要があります。
まず、要介護認定の申請を行います。申請先は保険者(市区町村)です。
申請があると、調査員が自宅を訪問して調査をします。訪問調査の結果を受けてコンピュータで一次判定をし、主治医の意見書を基にして二次判定を行います。二次判定により、自立、要支援1~2、要介護1~5へ振り分けを行い、要支援以上と判定されると、介護保険サービスの対象となります。介護サービス計画(ケアプラン)を作成し、ケアプランに基づいたサービスを利用できます。

介護保険は、在宅サービスと施設サービスに分かれます。在宅サービスには、ホームヘルパーが自宅へ訪問する訪問介護、訪問看護、訪問入浴、訪問リハビリテーション、通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーションなどがあり、必要に応じて組み合わせて利用できます。施設に短期間宿泊できるショートステイも利用できます。 施設サービスとは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などの施設に入所することです。要支援と認定されると施設サービスは利用できません。
その他のサービスには、福祉用具貸与や、住宅改修費用の補助などがあります。
 
平成27年4月からは特別養護老人ホームの新規入所者が、原則要介護3以上に限定されました。ただし、すでに入居している人については、制度改正後に要介護1、2に改善した場合であっても継続して入所することが可能です。

3、介護保険の利用者負担

介護認定を受けると、どのような介護を受けたいか、本人や家族の希望を聞いて、ケアマネジャーが計画(ケアプラン)を作ります。ケアプラン作成は無料です。自分でケアプランを作成することもできますが、一般的ではありません。
介護保険の利用は、介護度によって限度額が定められています。限度額範囲内は原則1割分となりますが、平成27年8月より、一定以上所得者は2割負担となります。
具体的には、年収280万円以上(合計所得160万円以上)の人の介護保険の自己負担割合は2割となります。合計所得とは、年金収入の場合は、収入から公的年金等控除額を差し引いた額です。

合計所得金額が160万円以上であっても実質的な所得が280万円に満たない場合や、2人以上世帯における負担能力が低いケースについては、「年金収入とその他の合計所得金額が単身で280万円、2人以上世帯で346万円未満の場合は1割負担に戻します。

サービスを受ける場合は、介護保険証の他に負担割合証を合わせて提示します。

【本人の合計所得が160万円となる事例】

Aさん 単身:年金収入280万円  ⇒ 2割
Bさん 単身:老齢基礎年金79万円+給与所得160万円=239万円  ⇒ 1割
   (実質的な収入が280万円より少ないことから、1割負担に戻す)
Cさん 夫婦:本人の年金収入280万円+配偶者の年金収入66万円 ⇒本人2割、配偶者1割
Dさん 夫婦:本人の年金収入280万円 配偶者年金なし ⇒ 本人1割、配偶者1割
(世帯収入が346万円より少ないことから1割負担に戻す)

4、高額介護サービス費

介護保険に高額介護サービス費の仕組みがあり、介護保険の利用者負担が世帯の上限額を超えたときは上限額までとなります。平成27年8月からは、高額介護サービス費の限度額については、医療保険の現役並み所得者は引き上げられました。現役並み所得者とは、住民税の課税所得金額145万円以上かつ65歳以上の人の収入合計が520万円(単身の場合収入383万円)以上の人です。



利用者負担が1割負担から2割負担に上がっても、単純に利用者負担額が2倍になるとは限りません。高額介護サービス費の仕組みがあるため、その上限までとなります。現役並み所得者の上限は月額44,400円となっていますので、この額を超える負担はありません。また、世帯の上限額ですので、たとえば夫婦で介護保険のサービスを利用しているのであれば、夫婦合わせて44,400円を超えての負担はありません。

5、高額医療・高額介護合算療養費

さらに、医療費と介護保険の利用者負担が高額になったときは、高額介護・高額医療合算制度の仕組みにより限度額を超えた分が返還されます。
高額医療・高額介護合算療養費制度(以下「合算療養費制度」といいます。)とは、世帯内の同一の医療保険の加入者について、毎年8月から1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担を合計し、基準額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。

同一世帯とは、毎年7月31日を基準日として、その時点で同一の医療保険制度に加入している人を同一世帯とします。 高額療養費制度が「月」単位で負担を軽減するのに対し、合算療養費制度は、こうした「月」単位での負担軽減があっても、なお重い負担が残る場合に「年」単位でそれらの負担を軽減する制度です。

高額医療・高額介護合算療養費の申請は次のように行います。

① 介護保険の被保険者は、介護保険者(市町村)に「自己負担額証明書交付申請書」を提出します。
② 申請先の介護保険者(市町村)から、「自己負担額証明書」が交付されます。
③ 医療保険に、「高額介護合算療養費支給申請書」と②「自己負担額証明書」を提出します。
④ 医療保険から「高額介護合算療養費」が、市町村からは「高額医療合算介護サービス費」が支給されます。

※支給割合は、医療と介護の自己負担割合に応じて按分されます。



※1 現役並み所得者とは、標準報酬月額28万円以上または住民税課税所得145万円以上、かつ、世帯収入520万円(単身者は383万円)以上。
※2 低所得者Ⅱとは、世帯の全員が市町村民税非課税(低所得者Ⅰを除く)など
※3 低所得者Ⅰとは、世帯の全員が市町村民税非課税で所得が一定額以下


6、補足給付の要件

補足給付とは、低所得者等に対して、施設サービス・短期入所サービスの食費・居住費(滞在費)の一定の額を介護報酬で補足するものです。
補足給付は利用者自身の所得に応じて給付を行ってきましたが、平成27年8月利用分から、補足給付の要件に資産を勘案することと改正されました。資産とは、預貯金・信託・有価証券です。生命保険・貴金属・その他の動産、不動産は対象外です。預貯金が単身で1,000万円超、夫婦世帯で2,000万円超の場合は補足給付の対象外とします。

預貯金の確認方法は、本人の自己申告を基本としつつ、通帳の写しなどの資料を添付して申告し、補足給付の申請に際し金融機関への照会について同意を得ておき、必要に応じて金融機関への照会を行うこともあります。

また、施設入所に際して、世帯分離をすることが多いですが、世帯分離しても配偶者の所得を勘案し、配偶者が課税されているときは対象外とします。
さらに、平成28年8月からは、補足給付の支給段階の判定に非課税年金(障害年金・遺族年金など)を勘案します。

補足給付が対象外となると、増える負担額はどのくらいになるのでしょうか。

入居者本人の所得が第2段階、年金収入が70万円で、ユニット式の特別養護老人ホームに入居しているケースでは、補足給付が受けられないと1日あたりの居住費は820円から1970円に増え、食費は390円から1380円となります。合計すると1日2140円の増額です。2140円×30日=月に6万4200円の増額です。

比較的費用のかからない特別養護老人ホームは安心感があり、待機者がでるほど希望が多いのですが、今後、資産がある人にとっては、負担が求められるので、安価で安心といえなくなります。




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投稿者 大埜治仁税理士事務所