税務コラム

2016年11月 1日 火曜日

年金制度改革法案審議入り



11月1日、現在開催されている平成28年2016年の秋の臨時国会で年金に関する法案の審議が始まりました。

「今回の年金カット法案が施行された場合、仮に年金制度は守られても、現在そして将来の年金生活者は守れません」(民進党 柚木道義衆院議員)

「年金改革法案は世代間の公平を図り、将来世代の給付水準を確保するものであり、年金制度への信頼を高めるために必要なものと考えております」(安倍晋三 首相)

本日審議入りした年金制度改革法案は、将来の年金水準を確保することを目的に毎年の改定ルールを変え、物価が上がっても現役世代の賃金が下がった場合には年金支給額を下げるなど、支給額を抑えることが柱となっています。

政府与党側は、「将来年金確保法案」であり、「世代間の公平確保法案」でもあるなどと訴えて、今の国会での成立を目指しているのに対し、民進党など野党側は、「年金カット法案」だと反発していて、激しい論戦となりそうです。

なお、2016年10月の段階で、正社員501人以上の企業で、週20時間以上勤務する労働者の一部が厚生年金への加入を認められるようになりました。

また正社員500人以下の企業に関しては、企業が任意した場合に厚生年金への加入が認められるようになりました。



今回の改正議論は、今の子供たちが将来の現役世代になった際に、国民年金の負担が重くなり過ぎない様に、保険料の水準を定めるということで、年金財政の健全化のために、年金の給付水準を調整する仕組みが導入しようとする政府・厚生労働省の改革案ということです。

年金給付額は物価や賃金に連動して毎年度改定しているいわゆる「物価スライド」方式を採用してきました。しかし、これまでは、物価が上昇していれば現役世代の賃金が下がっても据え置かれるというもので、高齢者世代にはプラス、現役世代にはマイナスといった世代間の不公平の要因の一つとなって来たとの批判もあったようです。

新ルールでは、「物価スライド方式」から「マクロ経済スライド方式」に移行し、賃金の下落に合わせて給付額を減らす仕組みで、現在年金を受給している高齢者世代の給付を下げ、現役世代が将来受け取る年金額の水準確保を目指すといったものとなっています。※

年金財政が悪化している主な原因として、少子高齢化により国民年金の支え手が減少していることは国民全体として周知のことです。少子高齢化により、保険料を支払う現役の世代が減少し、年金を受給する人が増えていくことは当然の事態です。今の年金制度は高度成長期に成立してきた経緯から、現在の受給財源を現役世代が支える制度のため、人口の増加する成長期にはなんら問題はなかったのに、人口減少期となった現在の日本社会には適応困難な制度上の欠陥が露呈してきた形となっていることは、誰がみても明らかな事実です。

現役世代と年金受給者世代の割合は現在4:1程度ですが、2025年には2:1程度になるのではないかという予想がされており、保険料収入と給付額のバランスが崩れることで、年金の財政が悪化するのではないかという声が上がっています。

「今の若者が年金を受け取る際には、負担した保険料を下回る金額になるのではないか?」という不安から、年金制度が不公平であるという意見が出るのも無理はありません。

しかし一方で、年金受給者が増加すると同時に、年金だけでは生活を賄えない低額年金・無年金者が増加しているとも言われています。

平成12年4月に公的介護保険制度がスタートしてから約15年になります。この間に介護費用の不正請求問題や、悪質な運営が行われている介護施設の表面化、また最近では介護ヘルパーの不足問題など、さまざまな問題が起こっています。監督官庁である厚生労働省も、このような事態を受けて改善に向けた取り組みをスタートさせていますが、その実現にはまだまだ不透明感があるのが現状です。

公的介護保険制度の内容ですが、40歳以上になると第2号被保険者として保険料を納めることになっています。この第2号被保険者は老化が原因とされる病気(特定疾病)により、介護や支援が必要になった場合には認定を受け、介護サービス・介護予防サービスを利用することができます。

また、65歳以上になると第1号被保険者となり、この場合には原因を問わず、介護や支援が必要となった場合には認定を受け、介護サービス・介護予防サービスを利用できることになっています。

介護サービスの利用者はこれまで、サービスにかかった費用の1割負担でしたが、2015年の8月より年間の年金収入が単身で280万円以上の人は2割負担へ引き上げになっています。この8月からの改正により、高齢者全体の約20%で、介護を受ける際の負担が増えると予想されています。

こうした情勢の中で、私たち個々人の介護への備えですが、上記のような公的介護保険制度によって一通り必要なサービスは受けられるようになっており、しかも利用者負担の金額もそれほど大きなものではありません

。したがって、一部の民間保険会社が扱っている所定の介護状態になった場合に介護年金を受け取れるというタイプの商品に加入して介護に備えることも間違いではありませんが、むしろ自宅の大規模改修や有料老人ホームなどへの入居費用などの公的介護保険では補えない大きな支出リスクに備えておくほうが大切です。

具体的には事前の資金計画を十分に行って預貯金等で準備をしておくことや、所定の介護状態になった場合に一時金として高額な保険金を受け取れるタイプの保険商品に加入しておくことなどです。但し、民間保険会社の介護保険の保険料は高く、また介護状態にならなければ受け取れないものがほとんどですので、できれば預貯金等で準備しておくほうが理想的のように思います。

※平成16年の年金改正では、年金額改定の仕組みを、これまでの完全自動物価スライド方式から、最終的な負担上限を法定化し、保険料収入の範囲内で年金の給付水準を調整する保険料水準固定方式が導入されました。

 保険料水準固定方式が導入されたことより、財源の範囲内で、かつ年金財政の安定の見通しが立つまでの間は、マクロ経済スライドが導入されました。
マクロ経済スライドとは、賃金や物価の変動をそのまま年金額に反映させるのではなく、被保険者数の増減や平均余命の伸びなどを年金額に反映させる仕組みです。

  わかりやすく言えば、被保険者数が減少すれば保険料収入も減るので年金額を下げる、平均余命が伸びれば年金支給額が増えるので年金額を下げるというものです。
ただし、平成16年に制度として導入されたマクロ経済スライドは、物価スライド特例期間中は実施されないこととされていました。平成27年度は物価スライド特例水準が解
消されたことにより、初めてマクロ経済スライドが実行されることになりました。

※マクロ経済スライドによる調整期間の間は、賃金や物価による年金額の伸びから、「スライド調整率」を差し引いて、年金額を改定します。「スライド調整率」は、現役世代が減少していくことと平均余命が伸びていくことを考えて、「公的年金全体の被保険者の減少率の実績」と「平均余命の伸びを勘案した一定率(0.3%)」で計算されます。

調整期間における年金額の調整の具体的な仕組み




名目下限の設定

現在の制度では、マクロ経済スライドによる調整は「名目額」を下回らない範囲で行うことになっています。詳しい仕組みは、下の図を見てください。



出典:厚生労働省ホームページ http://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/finance/popup1.html より編集

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投稿者 大埜治仁税理士事務所