税務コラム

2016年10月29日 土曜日

エンディングノートの勧め



最近、高齢者の間では、エンディングノートが静かなブームになっています。

エンディングノートがブームとなってきたのは、従来からされてきた遺言書とは異なり、法的に厳格性を求められる書き方の規定がなく、自書でなくパソコンでもまったく問題がないという
気楽さもあるし、「家族には迷惑をかけたくない」という気持ちが強い方が戦前世代や団塊世代の方たちに極めて多いことも大きな要因となっていると思います。

エンディングノートは、2010 年にメディアや新聞など、様々な媒体で紹介され全国的に認知されました。その後、エンディングノートの必要性が、理解され、大手出版社や金融機関、葬儀会社、NPO 法人など、多種多様の業界から出版され、数えきれないほどのエンディングノートが世に出回っています。

また、2030年には、いまよりも高齢化社会が更に進行し、50歳以上の男性の3人に1人は、未婚者になるという推計が内閣府より出ていますし、総務省の発表では、そう遠くない将来に高齢者の2人に1人は、孤立死をする可能性があるとの統計が出てされており、生涯未婚率や、50歳以上の一人暮らし率も年々増加しております。

両親は既に亡くなっていたり、子どもがいなかったり、兄弟がいても疎遠であったりと、お一人で終末期を迎える方にとっては、ご自分のこれまでの人生の足跡を残すためにも、ご自分の死後のことを委ねることになる家族、兄弟姉妹などの親族にとっても、そして、そうした身内のいない方にとっても、なおのこと重要です。

もちろん法律上、財産をどうして欲しいかを明確にする遺言書はコアとして重要であることはいうまでもありませんし、遺言に「付言事項」として遺言の対象となる財産以外のことを書くことももちろんできますが、そうすると法的に純粋に相続として扱う遺言にそれ以外のことがいろいろと書かれていると執行する側でも混乱の原因となるので、あまり多くのことは記載することはむしろ避けた方がよいのかもしれません。

そうした意味でも、エンディングノートは、自分の生前のことを自分なりに整理して、人生の総括をすることにも役立ちますし、自分が亡くなった後のことについて、財産の処分以外の日常生活の諸々の整理をしておくことで、心に残すことなく安らかな気持ちで、自分の人生の最後を締め括ることができ、自分自身にとって、最後のイベントとして貴重な行為ということができると思います。

エンディングノートとは何か?という定義もありませんので、作成する際は、自分の思いついたことを自分なりにメモやノートに書き出し、それらを後からゆっくり見直して整理することで、第三者にもわかり易いように作成することです。

しかし、具体的に「エンディングノートには何を書けばいいのか?」ということとなりますと、具体的には、以下のような事柄を各項目に沿って書き出す方法が効率よくエンディングノートを作成するやり方でもあります。

重要なのは、自分の身辺整理を各項目別に整理しておくことで、周囲の者たちに迷惑をかけないようにしておくことです。

(1) 住所、特に戸籍は相続税の申告や登記手続き上、相続人関係図を作成して、戸籍謄本と伴に添付して役所に提出することになるので、生まれてから、亡くなるまで全部取り寄せる必要があります。特に仕事や結婚などのため、度々、住所を移転している方は覚えている市区町村だけでも書いてあれば、残された家族たちは助かります。

(2) 免許・マイナンバーカードなどの身分証明書や後期高齢者医療保険証、老齢厚生年金・国民年金などの社会保険関係の証書類については、届出ないと、支払い請求がそのまま銀行口座などから引き落とされてしまう場合もありますし、入院の際の精算にも必要となりますので、家族などにもわかるようにしておく必要があります。

(3) ゆうちょや銀行など金融機関の預貯金の口座や通帳、印鑑についても、遺族に引き渡しできるように準備しておくことも、いざとなった時には大変助かることになります。また同時に公共料金やローンの支払いなど自動引き落としになっている生活上のサービスについても、支払通知書などで確認して、ノートにまとめておくと後々の解約手続きもスムーズにでき、便利です。

特に最近はパソコン、携帯電話やスマートフォンをお使いの場合、ネット上での契約のため通知書がなく契約自体がどうなっているのかすらわからない支払いもあったりしますので、見落としのないように通帳やクレジットの支払明細などでチェックしておくことも、無駄な支払いをそのまま続けてしまうことを避ける意味でも、やっておくことが大切です。
 
(4) 最後に住宅ローンや自動車その他の借金です。ローンなどに加えて、キャッシングなどで、大きな借金を秘密で抱えている方は、借入先、金額を記載しておいてください。亡くなったことを知った日(相続開始の日といいます)から3カ月過ぎても「相続放棄」や「限定承認」など家庭裁判所に申述等の手続きをとらずに何もしてないと、相続人は「単純承認」して相続することとなり、土地や家、預貯金や株式などプラスの財産も借金や税金などのマイナスの財産も、全部相続することを認めたことになります。
  
本人が亡くなって、3か月を過ぎてから莫大な借金が債権者から請求されて、残された家族が崩壊・・・ということだって現実にはあるのです。ですから、そうした負の財産は事前にエンディングノートに書いておいて、家族に知ってもらうことで、相続放棄や限定承認により、債務返済を逃れることができる場合もあるのです。

エンディングノートについては、あまり深刻に考えず、以下のようなポイントについて自分なりに「書けるところから書いてみる」ことが、最後まで書き上げる秘訣です。

個人情報
◦本籍、経歴、血液型などの基本的なこと
◦生前お付き合いのあった友人・知人や仕事以外に趣味の集まりなどの交友リスト、特に自分の葬式に誰を呼んでほしいかは、書いておかないと本人に知らされず、後悔することに
 もなるので、必ず核止めておきましょう。

介護、医療
◦介護が必要になったら、どうするのか?介護保険を使うには認知症や障碍者として要介護支援の認定を自治体から受ける必要があります。しかし、実際にあった話として、本人の意思や了解を経ずに勝手に手続きを進めてしまったため、後日、介護サービスとの間でトラブルとなったり、医師の診察や入院を拒否したりすると本人だけでなく家族も介護や医療機関
の方たちもみんなが困ってしまいます。

ですので、意思表示ができる限りは、ご自分の意思をはっきり周囲の者に伝え、動けなくなったり、意思表示ができなくなってしまう前にも必ず何かの形でご自分の意思を明確にしておくことが大切です。持病や飲んでいるクスリについて記載しておくことや延命治療、臓器提供をどうするかについても、はっきりと意思表示をしておくことが、後になって、抜き差しならぬ深刻な事態に陥ることを避ける唯一の手段でもあることを自覚しておくことも大切です。

葬儀、お墓
◦葬儀の規模(一般葬、家族葬、なし、など)
◦連絡する人リスト
◦お墓について

最近は、かつてにくらべて家族葬や個人葬など極めて小規模で粛々と行う葬儀が主流となって来たようです。それは、以前に比べて高齢化が進み、定年退職してから亡くなるまでの期間がずっと伸びたことに起因するという指摘もありますし、核家族化が進んで、親戚付き合いも疎遠となっている家庭も増えたためでもあるといわれています。

また、地方から出てきた方たちにとっては、家族のためにも、実家にある地域の代々の寺墓地に埋葬されるよりも、むしろ、宗教に関係のない霊園などを求める傾向があるのと、そもそも、都会ではそうした檀家制による寺墓地に入団するだけでも、費用もかかるし、なかなか空きが見つからないためでもあるとも言われています。

また、自分たちの墓を守る子孫がいない人も増えたため、最近では、宗教にこだわらない合祀墓や樹木葬形式の埋葬や海への散骨を希望されたりする方も増えたのも事実です。

以前、自筆遺言書に記載されているのを実際にみたことがありますが、エンディングノートの最後に、家族への感謝の気持ちやありがとうの言葉を書いておくと残された家族にもご本人の生前の暖かい気持ちも伝わってとてもいいことだと思いました。

要は、自分の人生の総決算でもあり、思い残すことなく、安心して旅立つためのひとつの方法として、誰もが気軽にしかも残された家族たちに負担とならないためにも、エンディングノート
の作成は社会的にも次第に重要性が増しているといっても良いと思います。

ご自分の人生の締めくくりとして、後顧の憂いのないように、しっかりとエンディングノートを作ることは、これからはとても大切なこととなってくると思います。




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投稿者 大埜治仁税理士事務所