税務コラム

2016年10月 6日 木曜日

個人事業主の住宅ローン審査対策



「住宅ローンの審査に落ちてしまいました。なぜでしょうか?」

個人事業主の相談の多くが「銀行が厳しくてローン審査に通らない」といったご経験をされているようです。

住宅ローンの審査に通るためにはどうしたらよいのでしょうか?

<住宅ローンの審査に通るための対策>

審査に落ちる原因の多くが、「返済負担率をオーバーすること」にあります。
「返済負担率」とは「年収に対する、借入金の年間返済額の割合」です。
この割合が金融機関によって規定されており、その規定内に収まらなければいけません。

たとえば、大手金融機関の規定は、

年収400万円未満の場合は35%以下、
年収400万円以上の場合は40%以下です。

個人事業主の場合は所得金額(売上から経費と青色申告控除額を指しい引いた金額)を年収として考えます。
この、返済負担率の規定をクリアしなければ審査のテーブルに乗せてもらうことすらできません。

ですので、住宅ローン対策には、まずこの返済負担率を試算することが先決です。

また、「借入金」の年間返済額には、「住宅ローン以外の借入れ」も含まれます。

例えば車のローンや教育ローン、それにカードローンなどです。

このような借入金の年間返済額を含めて計算するので、規定の返済負担率をオーバーしてしまうことがあるのです。

さらに個人事業主の場合には、「事業資金」を金融機関から借りている場合です。

当然、この「事業資金」の借入れも返済負担率の計算に含まれます。

ちなみに、法人事業主である場合に社長が住宅ローンを借りるケースでは、会社の事業資金の借入れは、社長個人の借入れではないので、返済負担率には含めません。

借入金が原因で返済負担率をオーバーする場合の対策は二つあります。

第一は返済負担率が規定内に収まるように借入金を返済してもらうことです。複数の借入金がある場合は、どの借入金を返済すれば良いのか?を返済負担率の計算を相談して決めます。

第二は、事業資金があるために返済負担率をオーバーする場合、フラット35を利用することです。

フラット35は、民間と住宅金融公庫が提携して実現した最長35年長期固定金利の 住宅ローンで、事業資金の借入金は、返済負担率に含めないことになっています。

民間 の金融機関にも「事業資金は返済負担率に含めない」というところもありますが、ほんの一部です。

フラット35は、住宅金融支援機構が保証する住宅ローン商品です。

各金融機関に商品を提供しているため、窓口となる取扱金融機関によって微妙に審査の内容が異なります。

フラット35を利用する場合、収入金額の定義には注意が必要です。

フラット35では、借入可能額の計算の基礎となる収入は、課税証明書もしくは納税証明書の申告所得の金額で判断しています。

これは、個人事業主で青色申告を利用している方は、65万円分の控除は収入に加算されない、ということです。

実際の年収が500万あったとしても、審査では

500万-65万=435万円

を収入として借入可能額を計算されるので、その点は要注意です。

また、銀行によっては、減価償却費についても差引かれて評価される場合もあるようですので、

借入希望金額より少ない額しか借りられない可能性もありますので、注意する必要があります。

個人事業主の場合、一般的に3期分の確定申告書の提出を求める金融機関が多いですが、フラット35の場合は2期分でOKの場合もあります。

ただし、取扱金融機関によっては3期分を求められることもあるので、事前に確認してから申し込むと良いでしょう。

2期分で審査してもらえることのメリットは"3年前の業績があまり良くなかった"という場合に利用しやすいことです。

次に、返済負担率をオーバーする原因として借入金はないけれども、そもそも「所得金額を少なく申告している」というケースがあります。

先日も、審査に落ちてしまったという個人事業主の方からのご相談があり、所得金額を見ると「25万円」となっていました。

税理士からの提案で、節税のためにできるだけ経費を計上して申告した結果です。

残念ながら、所得金額が25万円ではどの金融機関も住宅ローンを貸してくれません。

では、いくらの所得金額だったら住宅ローンを借りられるでしょうか?

金融機関によって差がありますが、仮に2000万円を30年返済で借りる場合に必要な所得金額は約290万円〜328万円です。

3000万円を30年返済で借りたい場合は、約380万円〜430万円です。

この所得金額が原則、最低2年続いている必要があります。

「返済負担率をクリアする」というのは、第一関門であり、審査項目の一つに過ぎません。

住宅ローンの審査には、返済負担率以外にも多くの項目があります。

たとえば、借入時の年齢や健康状態、住宅ローン以外の借入金の返済状況、担保評価などです。

金融機関がこれらの項目から見ているのは、「最後まで、きちんと返済できる人かどうか?」ということなのです。

「最後まできちんと返済できる」と判断してもらえれば、審査に通るのです。

たとえば金融機関は、「勤務先が安定している=最後まできちんと返済できる」というように判断します。

ですから、個人事業主の場合は、「事業の安定性がある」と金融機関に判断してもらえれば良いわけです。

では、どうしたら「事業の安定性がある」と判断してもらえるでしょうか?

まずは、営業年数です。10年以上営業していると、ポイントは高いのですが、3年未満だと、かなり厳しい見方をされます。

所得に大きな変動があるのも良くありません。昨年の申告よりも売上や所得が大きく伸びているからと言って「良い」という判断にはならないのです。

個人事業主の住宅ローン審査では、過去3年分(2年の場合もあり)の確定申告書の提出を求められるため、ここ数年の収入を低く抑えていた方は、不利になります。

そこで過去の収入を修正申告し、実際にはもっと収入が多かったことにすることで借入可能額を増やす、という対策を打つことも考えられます。

ただし、この方法はかなり危険がともないます。

あなたが修正申告をしたことが判明すると、「借入可能額を増やすために修正申告をしたのではないか?」と疑われる可能性もあるからです。

そうなると、金融機関での審査は、さらに慎重になります。むしろ、修正申告したことによる追徴課税を払った上に、住宅ローンは組めなかった、という事態にもなりかねませんので、あまりお奨めできる方法ではありません。

しかし、審査が厳しい個人事業主でも、審査に通る可能性が高まる方法があります。それは、「頭金が多い」ことです。

物件の価格にもよりますが、3割ほど自己資金があると、比較的スムーズに通ります。

サラリーマンであれば、自己資金ゼロでフルローンを組むことも可能ですが、個人事業主の場合は審査は厳しくなります。

3割はちょっと無理・・・、という場合でも2割程度は欲しいところです。

無論、土地を持っていて抵当権を設定出来たり、保証人がついてくれれば、鬼に金棒なのですが。

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投稿者 大埜治仁税理士事務所