事例

2013年12月 6日 金曜日

所在がわからない株主




新しい会社法が施行になってから、だいぶ経ちますが、現在の会社法では、1人株主も認められ、資本金が1円でも株式会社を設立できる時代になりましたので、こういう問題は、設立後20年以上経った会社でないと縁のないことかもしれません。

しかし、以前の会社法(旧商法)では、会社の設立には7人の発起人が必要で、それに応じた株主も複数募らなければ、会社を設立できない時代がありました。

当時は、コンプライアンスなどという言葉自体もなく、会社法も、もっぱら上場企業のような大企業を中心に作られていたので、その他の中小零細企業にあっては、そうした設立時の高いハードルをクリアするためには、親兄弟や親戚、知人に発起人や株主になってもらう必要があり、そのためにいわゆる名義貸しのようなことが、世間一般に行われていたのが、実態でした。

ところが、最近になって、そうしたいわば老舗ともいえるような会社で世代交代が現実問題となり、株の引継ぎが取りざたされるようになってきました。そこで、過去の実質的には、経営に関与していなかった名前だけの株主の株をどうしたらよいのかという問題が浮上してきたということです。

【所在が分からない株主がいるリスク】
設立当時の株主の所在が分からないということは、この株主の現状がしれないということですから、非常に不安なものです。ある日突然現れて、株式の買い取りや会社運営への介入を主張されると、会社の安定経営に問題が生じます。事業承継を円滑に進めるには、早い段階で所在不明株主の所有する株式を、処分したいものです。

【処分には5年間の準備が必要】
以下に処分手続きを示しますが、この手続きを行うためには重要な要件があります。それは、「5年間継続して、その株主に対する通知・催告が到達しないこと」です。

つまり、現在あなたの会社が所在不明株主に対して、通知や催告などを行っていない場合は、株主が所有する株式を処分できませんので、一刻も早く、通知・催告を開始することをお勧めします。

【所在不明株主の株式処理方法】
会社は、次のいずれの要件も満たす場合には、当該株式について売却などの処分ができるようになります。

1. 株主名簿に記載・記録された株主の住所またはその者が会社に通知した宛先に対して発した通知および催告が、継続して5年到達しないこと。

2. 当該株式の株主が、継続して5年間剰余金の配当を受領していないこと。

3. 当該株式について登録質権者がある場合には、当該登録質権者についても、上記I.、II.の要件を満たすこと。

所在不明株主の所有株式処分は、競売によるのが原則です。

ただし、当該株式に市場価格のある場合は、市場価格として法務省令で定める方法により算定される額をもって売却し、市場価格のない株式については、裁判所の許可を得て、競売以外の方法により売却することができます。この場合は、当該許可の申立ては取締役が2人以上の場合は、その全員の同意によらなければなりません。

さらに、裁判所の許可を得た場合は、会社が当該株式を買い取ることもできます。自己株式買い取りには、原則として株主総会の決議が必要になりますが、この場合は特例として取締役会で(1)買い取る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類および種類ごとの数)、(2)株式の買取りをするのと引換えに交付する金銭を決議すれば足ります。

【実施には公告と通知手続きが必要】
所在不明株主の株式処分を行う場合は、厳格な公告および通知手続きを踏まなくてはなりません。会社は処分しようとしている株式について、

1. 当該株主の氏名・住所、その株式の種類・数、株券を発行した場合は株券番号

2. その株式を売却などする旨

3. 利害関係人に対して売却などの処分に異議がある場合、一定期間内に異議を申し立てるべき旨

を公告し、かつ株主名簿に記載または記録した当該株主および登録株式質権者の住所に通知しなければなりませんので、注意が必要です。

当該株式を売却または買い取った代金は、所在不明株主が現れたら支払えるように準備をして待つか(この場合、売却代金債権の消滅時効は10年となります)、債権者不確知として法務局に供託をして、代金支払債務を免れることになります。




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投稿者 大埜治仁税理士事務所